2005年12月21日

今年の夏アメリカで買ってきたSteve Collの「 Ghost War」を読んでいます。彼は元々ニューヨークタイムズの敏腕記者でしたが、この夏「ニューヨーカー」に引き抜かれました。(今月のニューヨーカーには、彼の移籍後の第一作目のルポが載っています)。 Ghost Warは、ソ連軍のアフガニスタン侵攻から、2001年9月10日までに、いかにしてアル・カイダが成長し、米国への大規模テロを準備していたか、そして米国政府特にCIAがどれだけ大規模テロを防ぐために努力していたかに関する裏話です。非常に読ませる話で、とりわけCIAのビン・ラディン対策班など、諜報機関員らへの取材は精緻をきわめています。これならばピューリッツアー賞を取ったのも理解できます。しかし、9・11事件やイラク戦争で集中砲火に立たされているCIAが、「自分たちはこれだけ頑張っていたのだ」というアリバイ証明をするために、筆者に全面的に取材協力したという印象も与える本です。その意味ではこの作品は、CIAの仕事の一つである情報操作の産物とも言えるかもしれません。

それにしても、こうした安全保障・諜報関係の、分厚い本がベストセラーになるアメリカという国は、やはり知識階級の層が厚いように思われます。日本では難しいのではないでしょうか。